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| City104|> 中東・北アフリカ地域の宗教と文化 >vol.7 |
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久山宗彦 (くやま むねひこ)
1939年 京都府生まれ。
東北大学大学院修了。ハワイ・イオンド大学名誉博士。 1976〜78年
カイロ大学文学部日本学科客員教授。法政大学教授, 星美学園短期大学長を経て、現在、カリタス女子短期大学学長。法政大学講師。元「イラクの子供たちを救う会」代表。 新共著に「イスラム教徒とキリスト教徒の対話」(北樹出版)がある。
「日本・中東アフリカ文化経済交流会」(JMACES)会長。
日本イラク文化経済協力会規約(NICE Society)会長。 |
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中東・北アフリカ地域の宗教と文化
第7回 『アメリカの「同時多発テロ事件」後に思ったこと』 (その3)
−イスラエル− |
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ユダヤ人は神によって選ばれた民か?というテーマは、1948年のイスラエル建国以前には、イスラム教徒・キリスト教徒間のアカデミックな神学的テーマとして終始していたのだが、シオニズムの実現に漕ぎ着けたイスラエルの建国以降は、極めて政治的・軍事的臭いのするものとなって今日に至っている。
ユダヤ人は先祖アブラハム(アブラム)を通して子孫である自分たちのために神が約束して下さったパレスチナの大地に━創世記15:18には、エジプトのワーディー(かれ谷、小川)から大きな川、エウフラテス川までの地と記されている━世界のあちこちから堂々と威厳をもって帰還し、国家形態や国境の画定について未だ統一見解が出ていなくとも、ともかく周りのアラブの国々には負けない選民ユダヤ人の強力な独立国家をつくっていこうとする考えを、これまで一貫してもっているのである。
一方、アブラハムの息子イサクとは異母兄弟になるイシュマエルを先祖とするパレスチナ人は、ユダヤ人のような選民的な考え方は持ち合わせていない。現在、大多数がモスレムであるパレスチナ人は、イスラムの発想に明確に表れる、神(アッラー)の下で自分たちやアラブ人もユダヤ人も、勿論ほかの民族も皆平等になっていかねばならないという信念を強く打ち出している。イスラエル国家は認めるにしても、国のなかでユダヤ人もパレスチナ人も平等でなければならないと強く訴えているのである。
ところで、かようなユダヤ・パレスチナ(アラブ)両民族は互いにどのように関わっていけばよいのか、そのためのヒントが創世記に記されているのを、当事者ばかりか我々ももう一度想起すべきではなかろうか。
先祖アブラハムの一行が神のことばに従ってカナン(パレスチナ)の地に移り住んだ時、アブラハムは周りの人たちには極めて謙虚に、外国人のように遠慮気味に接したということである。こうして人々からは実に好意的に迎え入れられていたようである。
ところが現代のイスラエルの状況はこれとは全く違って、ユダヤ人はパレスチナ・アラブ人に対して、かれらが第二のユダヤ人、第三のユダヤ人となってユダヤ人国家の国造りのために協力するのであれば大歓迎だが、この遣り方で協力しない者は出来ればイスラエルから出ていってほしいという姿勢だ。
ユダヤ人がパレスチナ・アラブ人に対して父祖アブラハムに倣って、今後もし謙虚な姿勢に変えていくことが出来るならば、後者は歴史を通して広く知られているように、hospitalityの態度をもって心から関わってくれることになろう。
だがイスラエル建国から今日までの経過を見ると、今後、一方が他方の民族に管理されていくなどということは到底考えられない。ただパレスチナ人もユダヤ人も幕あいと言ってもよいくらいのごく一時的な争いのない時間は経験してはいるものの、これまで襲撃・爆撃・戦闘の繰り返しであったことから、一般市民の平和への願いは他民族とは比べられないほど強い。
かってエジプトのサダート大統領は電撃的にエルサレムに乗り込んで、敵対していたイスラエルと手を結んだ。当時アラブ・パレスチナ人のなかには、またユダヤ人のなかにも、それまで想像も出来なかった平和の味を噛み締めた者がかなりいたにちがいない。しかしながら他方では、イスラエルの国造りを肯定するような大統領の性急な遣り方を徹底批判する者がエジプト人のなかにも多かったようだ。その頃カイロ大にいた私は移動によく相乗りタクシーを利用していたが、運転手のなかには何人もサダート大統領のイスラエルとの平和締結を自分の方から話題にしてきた。中東戦争で負傷し義足になっていた−ドライバ−は、目下のところはイスラエルとの次の戦争の準備のための束の間の休息時間であって、大統領は大方の国民の気持ちが分かっていない、などと語っていた。イスラエルとの共存、更には三つの啓示宗教の協調を願ってシナイ山麓にユダヤ教・キリスト教・イスラム教それぞれのリーダーが一堂に会せる平和聖堂の建設を、サダート大統領自ら率先して進めていたが、大統領の遣り方に全くついていけなかった過激な集団、イスラム同胞団の一派によって、かれは暗殺されてしまった。この事件に関与し、その後、服役を終えた者のなかに、現在オサーマ・ビン・ラーディンをサポートしているエジプト人副将アイマン・ザワヒリ氏がいることは有名だ。
つづく
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※久山先生は「イラクの子供たちを救う会(平成11年8月13日に目的を達成し解散)」の代表として約10年間に渡り先頭に立ってNGO活動を推進されました。現在は、日本と中東アフリカ地域の関わりに関心をもつ内外の人々の交流を図る「日本・中東アフリカ文化経済交流会」(JMACES)を設立、毎月1回講演会を行います。 |
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