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| City104|> 中東・北アフリカ地域の宗教と文化 >vol.15 |
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久山宗彦 (くやま むねひこ)
1939年 京都府生まれ。
東北大学大学院修了。ハワイ・イオンド大学名誉博士。 1976〜78年
カイロ大学文学部日本学科客員教授。法政大学教授, 星美学園短期大学長を経て、現在、カリタス女子短期大学学長。法政大学講師。元「イラクの子供たちを救う会」代表。 新共著に「イスラム教徒とキリスト教徒の対話」(北樹出版)がある。
「日本・中東アフリカ文化経済交流会」(JMACES)会長。
日本イラク文化経済協力会規約(NICE Society)会長。 |
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中東・北アフリカ地域の宗教と文化
第15回 『サード少年の3度の手術に関わって』 (その1)
−イラク− |
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※本文は2003年7月12日に行った世田谷区立経堂小学校PTA 単位PTA研修会での講演録に、若干、加筆修正させていただいた。 |
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ただいまご紹介にあづかりましたカリタス女子短期大学の久山です。
今日の話をする前に、お配りした資料を確認させていただきます。
一番大きな紙が『朝日新聞』1月6日付の記事。実は私はサード少年とは1994年くらいからの関わりがありまして、日本で1995年に第一回、そして1998年に第2回、2003年3月に第3回目の仕上げの手術が行われました。それを私が中心となって受け入れてきたというわけです。1・2回の手術については若干報道されていましたが、今回はイラク攻撃と抱き合わせて各種のテレビ番組から、新聞でも各紙で扱われて、スポーツ新聞にまで及んでおりました。イラク攻撃とからめて、サード少年救済というまったく別の姿勢でわれわれがやっていることが取り上げられたのだと思います。
配布しましたもう一つの新聞記事は、毎日新聞の大阪本社から送られてきたものです。日本で手術をしたサード少年はイラクに帰るとすぐに戦争になったわけですが、開戦後かれはどのようにしていたかというと-------私はたまに電話をしていましたのでだいたい様子はわかっていたのですが-----その様子が記事の左上にあるアラビア語で書かれたサード少年の手紙に記されて、それが私のところに届いたものですから、これがおおまかに翻訳されて新聞に掲載されました。今日、私はサード少年と私について扱われた最初の新聞と最後の新聞を資料として持参いたしました。
中東世界とイスラム教
イラクのサード少年の話を中心にいろんな問題をこれから語っていきたいと思います。ここに中東地域の地図を用意してくださいました。中東というのは日本からはまだあまりなじみのない地域です。このあたりはどういう特徴のところかというと、宗教というものは飾りではないということです。簡単に言えば、宗教というものは人々の中で生きているのです。イスラムの方が大半なのですが、もちろん、それぞれの国にはキリスト教徒もいます。イスラエル人はほとんどがユダヤ教です。古いほうからユダヤ教、キリスト教、イスラム教という、これらの宗教はわれわれ人間と人間を超えた目に見えない絶対的な力をもった、あるいは徹底的にわれわれに配慮してくれる神との関係を明確にしております。聖典の旧約聖書、新約聖書、そしてイスラムの場合のコーラン(クルアーン)は、神と人間との関係を実に明確にしております。日本にもイスラムは旧約聖書や新約聖書とつながりはないのではないかと考える方が多いのですが、それは間違いだと思います。旧約聖書、新約聖書の流れをくんでコーラン(クルアーン)というイスラムの聖典は誕生しています。
イスラムは、サウジアラビアのマディーナ(メジナ)、マッカ(メッカ)の聖地と言われるところで誕生した宗教ですが、その誕生の背景にはキリスト教のネストリウス派がありました。これは中国に渡って景教という宗教としてわれわれにはよく知られているのですが、イラク・シリアには今なおネストリウス派が存在しています。昔はサウジアラビアにもネストリウス派のキリスト教がありました。普通のキリスト教の捉え方は、神が人間にまでなっってきて下さったというもので、人間イエスにまで神様が降りてこられたということです。クリスマスをお祝いするのはそこの部分でしょうが、ネストリウス派のキリスト教は、人間イエスが神になっていくという、ちょうど逆の発想を主張する宗教なのです。ところで、イラクにはバグダードとか南のバスラとか北のムースルにネストリウス派のキリスト教会があります。『朝日新聞』が最近イラクでキリスト教関係の放送をやりはじめたことを伝えておりました。今までのイラクではあまりにも少数のキリスト教界についてのニュースが番組で流れるなど、考えられないことでしたが、サッダーム・フセイン政権と反対の立場をとるシーアというイスラム分派と、キリスト教関係の番組は、アメリカやイギリスが入った関係かと思いますが、どんどん増していくのではないかなと思います。話を元に戻しますが、イスラムが誕生したときには、まわりにはネストリウス派のキリスト教徒、それにユダヤ教徒たちが非常に多かったわけです。特にマディーナ(メジナ)の街にはユダヤ教徒たちが多かったのです。こうした背景の下でイスラムが出てきたのであって、キリスト教やユダヤ教とまったく異なったところからイスラムが誕生したと見なし、しかもそれを邪教のように見なしたりする理解の仕方は改めなければならないと思います。(つづく)
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※久山先生は「イラクの子供たちを救う会(平成11年8月13日に目的を達成し解散)」の代表として約10年間に渡り先頭に立ってNGO活動を推進されました。現在は、日本と中東アフリカ地域の関わりに関心をもつ内外の人々の交流を図る「日本・中東アフリカ文化経済交流会」(JMACES)を設立、毎月1回講演会を行います。 |
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